皆さん、深夜ラジオは聴いたことはありますか?
私はここ数年の自分を救ってくれた一番のメディアは何かと言われたら、間違いなく「ラジオ」と答えます。
(具体的にはオードリーのオールナイトニッポン。リトルトゥースの一人でございます)
深夜ラジオは芸人をはじめとした面白い人達が、テレビでは話さないようなくだらないことを延々と話しています。
それが、どこか居場所のない自分の気持ちを救ってくれるのです。
最近はスマホの画面を見るのに疲れてきた人も多いのではないでしょうか。
そんな時はぜひラジオを聴いてみてください。
いつもと違った時間の流れ方を感じられると思います。
さて、今回はそんな「深夜ラジオ」がテーマの小説を紹介します。
それがこちら。
「明るい夜に出かけて」佐藤多佳子
良いタイトルですよね。
僕がこの本を手にとったのはまさにこのタイトルに惹かれてでした。
帯に「深夜ラジオ」の文言はあったのですが全然目に入っていなかったので、いざ読んでみてラジオの話が出てきてテンションが上がったのはお恥ずかしい話です。
この物語は「深夜ラジオ」と「コンビニ」が大きな軸となっています。
この本を一言で表すと?
僕がこの「明るい夜に出かけて」を一言で表すならこうします。
誰にも言えない「好き」が、誰かと繋がり世界を変える。
主人公は人と接することが苦手な大学生。
しかしそんな主人公が「深夜ラジオ」と「コンビニ」をきっかけに少しずつ変わっていきます。
彼が誰にも言いたくないと思っていた好きなこと(ラジオ)が、誰かと繋がることで彼の人生が広がっていく。
そんな過程が楽しめる、心苦しく、そして心温まる物語です。
こんな人におすすめ
「明るい夜に出かけて」はこんな人におすすめです。
- 深夜ラジオ好きな人
- コミュニケーションに悩みがある人
- 自分を少し変える勇気が欲しい人
特に深夜ラジオ好きの人はぜひ読んでみてください!
色々な芸人さんの名前や番組名が出てくるのできっと嬉しい気持ちになります。
特に「アルコ&ピース」のオールナイトニッポンが物語の中心になっているので、番組のファンは絶対に読んでほしいです。
私は最近深夜ラジオを好きになったのでまだ聴いたことはありませんが、ぜひこの番組も聴いてみたいと思いました。
おすすめポイント
ではここからは「明るい夜に出かけて」のおすすめポイントを紹介します。
ぜひ読んだことがない人はこちらのポイントを参考にしてみてください。
深夜ラジオ好きなら共感できる、ラジオの世界観を小説で楽しめる
主人公の富山は「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」が大好きな休学中の大学生
しかも彼はハガキ職人でもあり、どうやら界隈ではちょっとした有名人だとか。
しかし高校時代のある事件をきっかけにハガキ職人を辞めた過去もあります。
触れたくない過去として、今は少し距離を置きながらラジオを楽しんでいます。
そんな主人公はコンビニバイトと深夜ラジオの繰り返しで日々を過ごしています。
友達も少ない彼を深夜ラジオが支えている様子が、物語を読むとひしひしと感じられます。
きっと深夜ラジオが好きな人なら誰もがラジオに救われていると思います。
辛いとき、寂しいとき、勇気がほしいとき、暇なとき・・・
色んな自分を支えてくれる深夜ラジオの力強さが、小説を通して感じられるのがとても嬉しい気持ちになります。
深夜ラジオも小説も、自分とパーソナリティ(著者)との一対一の関係性となります。
似たような性質を持つエンターテイメントが交わる感覚は、どちらも好きな人なら堪らないはずです。
個性豊かな登場人物が主人公の世界を少しずつ変えていく
「明るい夜に出かけて」は主人公の富山に加えて3人の人物が中心となっています。
バイト先の先輩であり、歌い手としてネットやライブでも活躍をする「鹿沢」
偶然バイト先に現れた伝説のハガキ職人である女子高生の「佐古田」(ラジオネームは本編でお探しください)
主人公の過去を知り、いじりながらも支えてくれる高校時代の友人「永川」
彼らが主人公のバイト先やその周りで屯(たむろ)し、そして交わることで少しずつ物語が前進していきます。
いずれの登場人物も一風変わった経歴や性質で、それが主人公の世界を広げていきます。
主人公は嫌がりながらもその流れに巻き込まれ、結果として新しい気持ちや行動に繋がっていきます。
自分だけの趣味だった「深夜ラジオ」が人との出会いを生み、自分の道を照らしてくれる。
そんな偶然とトラブルの連続に心温まる物語です。
好きなことがあればきっと救われると思える
上に書いた通り、深夜ラジオがきっかけで主人公の世界が広がっていきます。
好きな番組のグッズを身に着けた女子高生を見かけて思わず口に出してしまったことがきっかけで佐古田と関係が始まり、そんな佐古田の強引さが新たな出会いやチャンスを生み出してくれます。
生配信の台本を考えたり、曲の歌詞のきっかけを生み出したり。
これまでの主人公だったら絶対しなかったようなことが、彼の周りの人が働きかけることで実現していきます。
それもこれも、自分が好きな「深夜ラジオ(そしてハガキ職人)」がきっかけになっています。
何の役にも立たないと思っていることでも、誰にも言いたくないと思っていることでも、きっとその「好き」という気持ちはいつか実を結びます。
必ず誰かの役に立つわけではないでしょう。
でもきっとどこかのタイミングで「好きで良かった」と思えるタイミングが来ます。
「好き」が自分をいい方向に導いてくれるのです。
「明るい夜に出かけて」を読み、主人公が少しずつ前進する様子を見るとそんな風に思えてきます。
終わりに
「明るい夜に出かけて」
「明るい夜」とはどんな夜なんでしょうか。
夜にだけ輝く、あなたの特別な時間や出来事はありますでしょうか。
きっとこの物語がそんな夜を越えて世界を広げたように、あなたにも明るい夜があると思います。
ぜひその夜を楽しんで、出かけてみてください。
この物語の中の「明るい夜」は何なのか。
コンビニの明かりなのか、街頭の明かりなのか、ラジオブースの明かりなのか。
それはぜひ本を読んで楽しんでみてください。
帯にはこう書いてあります。
「ひとり」でいたいのに、誰かと繋がりたい
そんな気持ちを抱えたことがある人はぜひ読んでみてください。
きっとあなたの心のむず痒い部分にそっと届く物語があります。
それではまた。
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