あなたの専門分野は何ですか?
胸を張って「これが私の専門です」と言えることはありますか?
私は言えません。
本が好きですし、今はWeb関係の仕事をしていますが、本当にそれが自分にあった専門分野なのかと言われると、自信を持って「はい」と言えないかもしれません。
小さい頃から野球・水泳をし、高校生ではバレーボールをし、大学ではマジックというまた違う方向の取り組みをしてきました。
そして並行して、高校では理系の数学や物理の勉強、大学は経済学や財務会計など、その時々にまったく違うことを学習してきました。
何となく小売業に興味があったので、小売に携わるWeb業界に入り運用や営業の経験も積んできました。
そんなバラバラのことばかりしてきた私としては、ずっと回り道をしているような気がしてなりません。
周りには専門学校に通う人やスポーツに明け暮れる人、そして早期に志望業界を決めてそこに就職を決めた人などがいました。
自分の道を見つけて、まっすぐにそこに進んでいるように(私には見える)
そんな回り道の自分の目に、救いのようなタイトルの本が飛びこんできました。
それが「RANGE」です。
サブタイトルは
知識の「幅」が最強の武器になる
です。
人は回り道をする方が経験や知識の幅が広がります。
その過程はきっと無駄にはならず、今後の糧になります。
私と同じように、人生で回り道ばかりしていると感じる人の背中を押してくれる本です。
今回は「RANGE」を読んだ感想を踏まえて、最強の武器を手に取り磨くためのいくつかの案とヒントを考えていきたいと思います。
RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる / デイビッド・エプスタイン 著 中室牧子 解説 東方雅美 訳
こんな人におすすめ
「RANGE」はこんな人におすすめです
- 自分の人生(キャリア)が回り道ばかりだと感じる人
- 器用貧乏だと感じる人
- 子供の教育に関わる親や教育関係者
興味が多岐に渡り、色々なものに手を出しては飽きてしまう人は特におすすめです。
いわゆる「熱しやすく、冷めやすい人」とも言えます。
そんな人は、ここから先どうして武器を磨いていくかを考えるヒントを得られると思います。
また、本ではタイガーウッズの例を挙げて早期の専門教育(小さい頃から1つに絞って何かに取り組ませること)の意義を考えています。
様々な教育方針が溢れる中でもこの早期の専門特化は誰もが一度は憧れや興味を抱くでしょう。
しかし、本当に早期の専門特化が適切なのかどうかを考える必要があります。
自分の子供に何を学ばせればいいか、生徒にどういう考え方で指導すればいいか。
そんな悩みを持つ親御さんや教育関係者の方にも豊富な例とヒントを与えてくれます。
好き嫌いが分かれそう
さて、何とも不安になる章題にしましたが、この本は好き嫌いが分かれると思います。
なぜかと言うと、事例が長くて多いからです。
これを「豊富な事例で参考になる」と考えるか、「長くて冗長でつまらない」と感じるかは人によると思います。
ちなみに私は後者に近かったです。(ここは正直に伝えるべきだと思うので書きました)
だからこそ、今回はなるべく簡潔に要点をまとめ、その上で私が考える案とヒントを挙げていきたいと思いました。
(もちろんその上で本を買って読んでほしいというのが本音です。あすよみはまとめサイトではなく本の紹介サイトですので・・・)
少しいつもと変則的な内容になりますが、テーマや内容に強く惹かれたのでぜひとも多くの人に知ってほしいと思い記事にしました!
ぜひご覧いただければと思います。
どうして「知識の幅」が大事なのか? 3つのポイント
まずは本書のテーマである「知識の幅が最強の武器になる」のはどうしてなのかを簡潔にまとめたいと思います。
本では様々な方向から説明されていますが、私が印象に残った3つを取り上げていきます。
1.早期の専門特化は「意地悪な環境」には適さない。
まずは先ほど少し触れた早期の専門特化についてです。
タイガー・ウッズが生まれてすぐからゴルフに特化しスターになった話を聞くと、自分の子供にもそのように早期から何かに特化させたいと思うかもしれません。
または「どうして私に〇〇を習わせなかった」と親に言ったことがある人もいるでしょう。
こうした教育方針はシンプルで実践しやすい印象を受けるため、正解であるかのように見えます。
しかし「RANGE」ではこの早期の専門特化に警鐘を鳴らします。
その理由として「環境」の違いを挙げています。
早期の専門特化が有効なのは、ルールが決まっている「親切な世界」に限られるのです。
本では例としてゴルフやチェスなどが挙げられています。
しかし現実の世界、特に大人になりビジネスとして多くの人が働くことになる世界、はルールが決まっていない「意地悪な環境」と言えます。
そこでは、早期に専門特化して1つのパターン(実際には細かく多くのパターンに分かれますが)を学んだところで適用しきれないということです。
「〇〇すれば××になる」と決まっていない現実世界では1つの型にハマってしまうのは最適ではないでしょう。
この場合、多様な経験や知識を身につけていれば、その状況に近いものを参照し対応できる可能性が高まります。
この自分の知っているものから類推する力はアナロジーと言いますが、アナロジーこそ知識の幅が武器になる代表的な思考法と言えます。
未知なる世界で戦う多くの人にとっては、知識の幅を広げてアナロジーを活用するのは強力な武器となります。
そのため、早期に専門特化するのではなく、興味を広げるように様々な体験を積むことが重要と言えます。
本の中では優れた音楽団では様々な楽器を経験した人が多いことなどが例として挙げられています。
2.専門が強いほど1つのツールに陥りやすい
2つ目のポイントとして「ツール」の危険性が挙げられます。
ツールとはその人の専門分野を支える道具のことで、物理的な道具はもちろん思考法なども含まれています。
何かの専門になればなるほど、その分野の枠組みの中で物事を考えてしまいます。
もちろん専門の知識があることで、深く考えることができると思いますが、本当に問題がその領域にあるとは限りません。
幅広い知識や思考法を持つことで、広く事象を捉えて問題点を発見することができます。
また、自分の知識だけに頼らず他の専門領域の人に見てもらうことで、知識の幅を広げることも有用です。
本では、自分の得意な手術法に頼る医者のリスクや、異分野の人からの課題解決を募集する掲示板の有用性などが書かれています。
専門分野を持つことはもちろん大事です。
しかしそこにこだわってしまうと、短絡的な思考(しかも本人は気付きにくい)に陥ってしまうので注意すべきだということです。
専門分野以外にも基礎的な知識を広く身につけること、または異なる専門家同士のネットワークを活用することで、これまで辿り着けなかった解決法が出てくる可能性が高まります。
これは新たなアイデアを生み出す時にも言えます。
発想にまつわる本ではよく、距離の通り2つの事象を掛け合わせると強いアイデアが生まれやすいと言われています。
これは、自分の1つのツールに陥らないというのと同じ話です。
様々なツールを組み合わせることで広く可能性を探ることができます。
3.耐久性のある知識や技術を遠くに移転することができる(枯れた技術の水平思考)
2つ目のポイントと似ていますが、知識の鮮度についての視点なので別で取り上げました。
RANGEでは任天堂がゲームに参入した際のとある人物の話が取り上げられています。
そこでは、当時すでに一般化されていた技術(いわば古い技術)をゲームにすることで新たな商品として販売した例が紹介されています。
競合に勝つための方法として、必ずしも最新の技術が必要ではないということです。
最新の技術を追うのは専門家でないと難しいでしょう。
しかし、人間は全ての専門分野になることはできません。
知識の幅を広げていきたいのに、最新の技術動向まで把握するのは現実的に難しい。
だからこそ、耐久性のある知識や技術が大事になってきます。
基本的な知識や原則を知っておけば、知識を組み合わせたアイデアの創出はできます。
むしろアイデアを出す時は深く入りすぎず、なるべく遠いものを掛け合わせるべきなのです。
既にありふれた耐久性のある知識や技術を活かして、異分野で活用することはとても有効です。
これをまさに上で挙げた元任天堂の横井軍平さんは「枯れた技術の水平思考」と呼んでいます。
幅広い知識を持つ上で、全ての最新の動向を抑える必要はありません。というより無理でしょう。
しかし、枯れた技術を身に付けて掛け合わせることで最新の技術にも負けないアイデアを出すことはできます。
具体的にはどうすれば? 知識の幅を広げる案とヒント
ここまで「RANGE」から学んだ、知識の幅が最強の武器になる3つのポイント(理由)を紹介してきました。
おそらく参考になる視点だったと思います。(私は大いに刺激になりました)
しかし「じゃあどすればいいのか?」と思った人も少なくないでしょう。
実はRANGEでは実践方法についてはあまり触れられていません。
ここからは、知識の幅を広げるための方法をいくつか考えていきたいと思います。
1つ目はRANGEで紹介されていますが、それ以降は私が本を読んで思いついたことがほとんどです。
社会人や大学生を想定し、いくつか案とヒントを見ていきましょう。
なるべくハードルが低く、取り組みやすいものに絞りました。
ぜひ参考にしてみてください。
1.週に1日または数時間、自由な挑戦の時間を設ける
まずはRANGEで紹介されていた方法を紹介します。
ある科学者が土曜日は仕事としてではなく、自由な発想で実験を行っている例が挙げられています。そしてそこで新たな発見をされているということです。
もちろんこれを読んでいるのは科学者じゃない人がほとんどでしょう。
しかしこの考え方は活用できると思います。
自分の仕事を普段は考えない角度で見てみたり、興味がある分野の本や動画に触れてみたり。
こうしたことは忙しい現代では意図的に設定しないと取り組めないでしょう。
金曜の夜でも、土曜の朝でも、水曜の早朝でもいいでしょう。
時間帯を決めてぜひ自由研究をしてみてください。
その時間に名前を決めればもっと楽しいかもしれません。
サタデーナイトラボ、週末実験所、水曜探検アワー、なんでもいいです。
あなたがのびのび楽しめるような時間を作って、自由に(知的に)遊んでみてはいかがでしょうか。
2.本屋で偶然出会った資格試験を受けてみる
世の中には様々な資格があります。
資格は階級ごとに、その分野に関する入門から詳細まで広く取り扱っています。
自分の勉強や仕事に関する資格勉強をしたことがある人は多いでしょう。
しかし、全く関係がない資格に取り組む人は少ないと思います。
知識の幅を広げるために、時には思い切った出会いも必要です。
本屋を一周して(普段行かないところも!)偶然目に入った資格を勉強してみると面白いかもしれません。
一切料理をしたことがない人が料理検定を勉強したり、センスに自信がない人が色彩検定やカラーコディネーターを受けたり、技術職の方が簿記を受けるのもいいかもしれません。
新たな出会いと学習を通して、これまでの自分になかった知識や視点が手に入るでしょう。
それはきっと自分の仕事や生活の中で新鮮なアイデアをもたらしてくれるはずです。
あくまで知識の幅を広げることが目的ですので難関資格に挑む必要はありません。
(興味を広げた結果、深く学びたいと思ったものなら良いと思いますが)
1年や数ヶ月など、期間を設定して取り組むとメリハリが出るのでおすすめです。
ちなみに、資格ではないですが「1週間毎日本屋に行く」というもの面白いと思います。
過去に実験したことがあるので、興味がある人はぜひこちらの記事もご覧ください。
3.一緒に勉強する仲間を見つける(同じ勉強じゃなくてOK)
あなたの周りに仕事の時間以外で何かの学習をしている人はいますか?
もしあなたのコミュニティにそういう人がいれば、ぜひ一緒に活動してみてください。
同じ内容を勉強する必要はありません。
同じ時間に勉強したり、定期的に進捗を報告しあうことができるのが良いと思います。
私は大学時代の友人とオンライン上で朝活をしていますが、それぞれ学ぶことはバラバラです。
画面を接続して、同じ時間に何かに取り組むというやり方です。
そして月に一度、それぞれの進捗報告をして励ましあったり意見交換したりしています。
早起きして勉強する仲間がいるという環境があるだけで、1人で取り組むよりぐんと心強くなります。
ちなみに朝活を誘う場合は、最近朝に勉強し始めたと話をして、相手の反応が良ければ誘ってみるのが良いと思います。
朝活してみたいと思いながらも、きっかけがない人が多いと思います。
あなたがやるなら私もやってみようと思ってもらえる人と一緒にやるのがおすすめです。
また、会社員の方であれば会社内や業界の中で「もくもく会」なるイベントが存在することもあるでしょう。(IT業界では特に)
まさに私が実践しているのと同じで、同じ時間、同じ場所(オンラインかも)に集まりそれぞれが黙々と作業をする集まりです。
終わった後すぐ解散する場合もあれば、ご飯に行くこともあるでしょう。
そうした会に参加してみるのもいいかもしれません。
それも難しい人は、「みんチャレ」というアプリなどもおすすめです。
ダイエットや資格取得など、目標ごとに少人数のグループがたくさんあります。
定員に空きがあるグループに参加して、同じ目標を持った仲間同士でコミュニケーションを取ることができます。
目標の行動をした日は、その日の写真を載せる制度で、一定の日数写真を載せなければグループから自動で脱退となります。
たくさんのグループがあるのできっと自分の目標にあったものに出会えます。
そしてオンライン上ですが、同じ志を持った仲間と切磋琢磨し合えるのは貴重な環境です。
こちらもおすすめです。
勉強しやすい環境を作ることで、知識や経験を強化するきっかけが増えます。

4.発信ツールを持っておく。SNS×note(orブログ)がおすすめ
知識の幅を広げると様々な知的好奇心が芽生えてきます。
単に学習して知識が増えるのはもちろんですが、その知識を自分の分野に活かしたチャレンジも思いつくかもしれません。
そうした取り組みは必ずしもうまくいかないかもしれませんが、その過程を残しておくことはとても大事です。
その際、オンライン上であれば他の人からフィードバックをもらえる可能性もあります。
そこでSNSやブログサービスを活用できるでしょう。
Twitterで学んだことを日々ツイートして、ある程度まとまったら記事にするのでもいいですし、学んだことを画像にまとめてInstagramに投稿するのも良いと思います。
または簡単な動画にしてチャレンジの様子をYouTubeやリール(Instagram)にアップしたり。
個人的にはテキストでまとめるのが楽なので、Twitter×noteがおすすめです。
Twitterであれば同じ業界の人を気軽にフォローしやすく、またその人たちの日常も見れる機会が多いのもおすすめする理由になります。
しかし画像作成や動画編集が好きな人はInstagramやYouTube(またはTikTok)も良いと思います。
興味を広げていく過程を見せていってもいいですし、その結果だけをまとめていくのもよいでしょう。
いずれにせよアウトプットを意識しながらに学ぶことで学習効率は格段に上がります。
(私もこのブログのおかげで読書の質が上がったと感じます)
1.で付けた名前をアカウント名にしても面白いと思います。
楽しめる方法で学習し、アウトプットまでできるのが理想です。
5.友達や知人などの話を深掘りしてみる
人は何かしらの得意分野があります(専門と言えないまでも)
お友達や知人などのお仕事や趣味の話をじっくり聞いてみるのもおすすめです。
私は人の話を聞くのが好きなので、仕事仲間の仕事以外の好きなことの話を意識してよく聞くようにしていました。
サウナにハマっている後輩にその魅力を聞いたり(連れていってもらったり)、同僚がハマっているアイドルやアニメの話を聞いたり、大学時代の専攻分野の話を聞いたり。
体系だった知識とは言えないですが、断片でもその世界の知識を知ることができるのは新たな出会いと呼べると思います。
何より、当事者に聞くことで熱量のこもった話を聞くことができます。
自分の世界が広がるのはもちろんですが、そうした人たちの得意分野を知っておくことで、活かせるネットワークが広がります。
自分には解決できなくても、この人なら何かヒントが分かるかもと考えられることは非常に大きいです。
本や画面に向かうのが苦手な人は、ぜひこの方法で世界を広げてみてはいかがでしょうか。
知識も得られるし仲も深まるし、一石二鳥です
6.一万円札を握りしめて本屋に行く
最後の1つはお手軽かつワクワクする方法です。
ステップは簡単です
- 一万円を握りしめて本屋に行きます
(または電子マネーや口座の残高を確認します) - 本屋に入りカゴを持ちます
(本屋にカゴがあるって知ってましたか?) - 本屋を一周して興味を持った本をカゴに入れていきます
(2.のような資格でも良いし、新書や小説でもいい)
※自分の専門分野を除く - 予算を超えた場合は泣く泣く本棚に戻しましょう。
(「また迎えに行くね」と声をかけてあげるとなおよし)
以上です。
この方法は知的好奇心をくすぐられワクワクすると思います。
実際にやってみると子供のような気持ちになり、とても楽しいです。
何より本屋でカゴを使うという優越感も味わえます。(普段カゴ使ってる人見ないですよね)
なるべく幅広く、自分の興味のある本を拾ってみてください。
1分野に絞って数冊買うのも良いですが、まずは興味の方向性を広げる意味でも異なる分野がおすすめです。
私もこの方法は何度か実践していますが、とにかく楽しいです。
一緒にできる仲間がいれば「相手が興味を持ちそう(かつ相手の専門じゃないもの)」などテーマを決めてやるのも面白いと思います。
本はその道に精通した人がそのエッセンスを詰め込んだものです。
これを活用しない手はありません。
ぜひ本を楽しんでみてください。
(おすすめの本はあすよみのいろんな記事で紹介していますのでぜひチェック!)
さて、最後は宣伝になりましたが、以上が知識の幅を広げる案とヒントになります。
(他にも専攻以外の大学の授業を受けてみたり、セミナーに参加してみたり、幅広い知識がある人のYouTubeを見たり、色々ありますが文量が多くなってきたので割愛しました)
これらをそのまま取り入れても発展させてもいいので、ぜひ自分の幅を広げるチャレンジをしてみてください。
すぐには役立たなくても、必ずあなたの心や知識は広がり、いつかのチャンスに繋がります。
知識の幅があれば、広い視点で物事を見て、問題点の発見や解決策のアイデアにつながっていきます。
著者が最強の武器というその「知識の幅」をぜひ多くの人が持ち、より良い明日に繋がりますように。
私もどんどん興味の幅を広げて、もっと皆さんが本を楽しめる活動を増やしていきたいと思います。
長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。
本日は「RANGE」とその実践編を紹介しました。
それではまた!
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