もしも新卒入社の初出勤で会社がなくなっていたらどうしますか?
そのせいで自分の夢を叶えるチャンスがなくなったとしたら?
本日紹介する「イマジン?」(有川ひろ著)は、そんな主人公が一度諦めた夢に向かって挑戦する物語です。
夢に向かっていいのかと悩みながらも一歩踏みだす主人公、温かく厳しく支える制作会社の人たち、憧れの世界で働くキャストやスタッフ達。
想像と情熱を持って映像業界を走り回る、若き男の物語。
「イマジン」有川ひろ
こんな人におすすめ
「イマジン?」はこんな人におすすめです。
- お仕事小説が好きな人
- 映像業界(映画・ドラマ)に興味がある人
- 裏方に興味がある人
「イマジン?」の舞台は映像業界。
映画やドラマの撮影場所が主な舞台となります。
そこにはキャストをはじめ、制作を指揮する監督や助監督、音響・照明・美術などの技術スタッフ、そして全体がスムーズに進むように各種の調整をする制作スタッフなど様々な人が登場します。
主人公の良井良助は「殿浦イマジン」という制作会社に出会い、そこで働くことになります。
一度諦めた夢に挑戦するチャンスを掴んだ主人公が必死に駆け出す姿は、仕事をする人なら胸を打たれ勇気を与えられます。
ぜひ自分の仕事への向かい方に悩む人は一度読んでみてください。
読み終える頃には、自分の仕事に対して何か新しい気持ちを抱いていると思います。
あらすじ
小学生の時に見たとある映画に自分の地元が映った。
画面の中の幻想と現実が結びついた衝撃が忘れられず、映像業界への志を抱いた主人公の良井良助。
夢を叶えるために選んだ入社先の制作会社は、なんと入社日には綺麗になくなっていた。
業界から弾きものにされた良井良助は再就職もできず、バイト生活を続ける日々を送る。
しかし27歳のとある日、バイト先の先輩からとある一言を告げられる
「朝五時、渋谷、宮益坂上」
そう、それはとあるドラマの撮影現場の集合だった。
諦めていた夢の世界が目の前に現れた主人公は、そこで出会う厳しくも温かい人たちに支えられながら夢への挑戦に飛び込む。
3つのおすすめポイント
ここからは「イマジン?」を読むにあたっての3つのおすすめポイントをご紹介します。
まだ読んでいない方は見どころの1つとして参考にしてみてください!
普段見れない映像業界の裏側を覗き見できる
まずは舞台となる映像業界自体の特殊さ・面白さが見どころの1つに挙げられます。
普段私たちはその完成品であるドラマや映画を見ますが、その裏側を知ることができるのがとても興味深いです。
最近ではメイキング映像として撮影現場の映像が特典で付いたりしますが、それはあくまでキャスト中心の映像となります。
(キャストが好きな人が見るのがほとんどだと思うので、当然の対応だと思いますが。私ももちろんメイキングは大好きです)
しかし「イマジン?」の主人公は制作スタッフ。
制作というのは監督や技術スタッフが手掛けない専門技術以外の部分をまるっと対応する、とても対応範囲が広い仕事です。
幅広い視点から制作現場を見て、円滑に進むように手配・調整・交渉していく必要があるお仕事なので、当然主人公たちは周りの人たちをよく観察します。
そういった制作スタッフから見る撮影現場というのは、私たちが見るメイキング映像とはまた違った視点での驚きや発見に満ち溢れています。
優しいキャストさん、厳しい監督、使えない助監督(助監督って複数人いるようです!)、メイクや音声さん・・・制作スタッフは色々な人と関わりながら仕事を進めていきます。
まるで工場見学のようなワクワクした気持ちで業界を知ることができるのが「イマジン?」の1つの魅力といえます。
(もちろんワクワク以上にハラハラする場面もたくさんあります!)
実生活でも超重要。想像力が仕事を円滑に進める。
主人公が偶然の出会いから働くことになるのが「殿浦イマジン」という制作会社。
殿浦は代表の名前ですが、イマジンとはどういうことなのか?
作中では代表の殿浦はこのように語ります。
「そうやって想像するのが大事なんだよ。たとえ最初は見当違いでもな。自分が何をしたら相手が助かるだろうって必死で知恵絞って想像すんのが俺たちの仕事だ」
(これが本当の由来なのかは置いておいて)イマジンという言葉の大事さが伝わるセリフだと思います。
制作という、撮影現場の潤滑油のような立場だからこそイマジンがより必要となるのでしょう。
しかしこの殿浦のセリフはどんな仕事をしていても役立つと思います。
どんな仕事も相手がいてこそ成り立ちます。
直接相手と関わらない仕事でも、巡り巡って必ず誰かに届くのが仕事です。
(そうでなければ、きっとそれは仕事として成り立たないでしょう)
相手がいる以上、その人のことを考えて動くのが大事になります。
相手が困っているのはどういうことか、何を必要としているか、どうすれば喜んでもらえるか、相手が予想もしていなかった方法で課題を解決できないか・・・
きっとお仕事の中でそんなことを考える機会は多いのではないでしょうか。
私たちの仕事にもとても大事な「イマジン」
それに立ち向かい奔走する主人公を追体験することで、私たちの実生活にもきっと良い影響があると思います。
有川ワールドが感じられる、熱きお仕事小説
私は数々の有川作品を読んできましたが、「イマジン?」も有川ワールドが感じられる素晴らしい作品でした。
有川ひろさん(以前は有川浩さん)は「図書館戦争」や自衛隊三部作などが代表作かと思いますが、私たちが直接目にすることが少ないお仕事を取り上げ、その魅力をこれでもかと伝えてくれます。
しかもただその現場を伝えるだけではなく、そこで働く人たちの「人間味」がとても盛り込まれているのが作品にのめり込む1つの魅力といえます。
自衛隊員の恋愛に特化した本もあるぐらいです。
国を守るために命を賭して働く自衛隊員と考えるとどうしても硬いイメージが先行しますが、そうした人たちの人間臭い部分をしっかり伝えてくれるのが有川作品のすごいところだと私は思います。
この「イマジン?」もその例に漏れず、映像業界、しかもその裏側を支える制作スタッフの視点から彼ら彼女らの活躍や苦悩を描いています。
そこには一度夢を諦めかけた主人公をはじめ、次なる夢に向かい悩みながら進む人、職場の環境に悩みながら働く人、妻との約束を果たすため野望を持って働く人・・・
それぞれの悩みや夢を知りながら作品を楽しむことができます。
また、有川ひろさんの作品の大きな魅力の1つに「会話のリアルさ」が挙げられます。
小説だからと変にこった言い回しや表現が多いわけではなく、本当にそこで繰り広げられているような会話が文中で展開されています。
そのリアルさに違和感を覚える方もいるかもしれませんが、きっと読むうちにのめり込むはずです(私がそうです)
それは、会話のリアルさに加えて、作り込まれた人物設計と描写、そして次から次に起こるトラブルとそれを支えて乗り越えるストーリーの力強さが大きく影響していると思います。
キャラクターを身近に感じ、感情移入がしやすい。
その結果キャラが好きになり、その舞台となる業界の理解も深まる。
お仕事小説としても熱さが感じられるのが素晴らしいと感じています。
ぜひお仕事小説が好きな人、気になる人は「イマジン?」を読んでみてほしいです!
最後に
今回は有川ひろ「イマジン?」を紹介しました。
一度夢を諦めた人が偶然転がり込んだきっかけをもとに夢に再挑戦する物語。
主人公の熱量もそうですが、周りの人たちもそれぞれに夢を持って取り組んでいます。
だからこそ主人公に厳しく指導することもあれば、優しく成長を見守ってくれることもあります。
そんな人間ドラマが繰り広げられる、熱きお仕事小説です。
有川ひろ作品が好きな人はもちろん、これまで読んだことがない人もぜひ手に取ってみてください!
「有川浩」から「有川ひろ」に改名した後の初の作品でもありますので、初めて読む人には良いきっかけかもしれません。
読んで後悔はしない作品と自信を持っておすすめします!
(きっと有川浩時代の作品もその後読みたくなるはずです!)
あすよみでは他の有川浩さんの作品も紹介しています。
ぜひ気になった方はそちらもチェックしてみてください!
それではまた別の記事でお会いしましょう!
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