ビューティーパートナー(化粧品販売員)。
女性なら誰もが憧れる職業の一つではないでしょうか。
いつも綺麗にしっかりメイクをして、お客様それぞれに合った色や雰囲気のメイクをしてくれる。
しかし、そんなビューティーパートナーにだって悩みはあるんです。
今回紹介する本は、宮下奈都さんの「メロディ・フェア」。
ここでは、新人ビューティーパートナーが悩んでもがいて、それでも少しずつ前に進んでいく様子が描かれています。
どんなに憧れがあってもやりたいことであっても、楽な仕事なんて決してありません。
主人公と同じように、なかなか思うようにいかず悩んでいる方もいるでしょう。
今の状態はもどかしいと感じるかもしれませんが、少しずつ少しずつ、前には進んでいるのです。
そのことに気づかせてくれる、温かく前向きなストーリーです。
こんな人におすすめ!
・化粧品販売の仕事に憧れを抱いている人
・物事が思うようにいかず悩んでいる人
・綺麗なものが好きな人
とにかくメイク、化粧品が好きな方にはたまらないと思います!
その人の肌に合った化粧品を選んで、丁寧に丁寧に塗っていく。
女性の憧れでもありますが、そんなキラキラしたイメージの裏では販売員も悩んだり落ち込んだりしているんですよ。
そう思うと少し勇気づけられますよね。
あらすじ
化粧品会社でビューティーパートナーとして働き始めた小宮山結乃。
口紅が好きで化粧品会社を志望しましたが、受かったのはあまりぱっとしないピンクの会社でした。
しかも配属されたのはデパートではなく、地元郊外のショッピングモールのカウンター。
同じ店舗で働いている馬場さんは凄腕で、お客さんからの指名も多いようです。
一方の結乃は働き始めて1ヶ月が経っても売り上げも伸びず、なかなか思うようにいきません。
妹は化粧をすることに関心がないどころか毛嫌いしているところがあり、家族にも思っていることを言えません。
いつになったら売り上げは伸びるのか。
いつになったら妹や母に理解してもらえるのか。
思い悩みながらも日々少しずつ成長していきます。
また、このショッピングモールには変わったお客さんが多く来ます。
ここでは簡単にご紹介しておきます。
浜崎さん
還暦を過ぎたぐらいのおばさんで時々カウンターに寄っていくのですが、何も買わず、ただお嫁さんの愚痴を言うだけ。
メイクもろくにしておらず、化粧品を買う気もないのに勝手に腰かけて世間話をして帰っていきます。
厄介なお客さんだと思っていたのですが、結乃の一言で、ようやく世間話以外の目的でカウンターにやってきたのでした。
鉄仮面
毎日夕方の5時20分になると、店内にメロディ・フェアのやさしい音楽が流れます。
それと同時に必ず現れるのが鉄壁のメイクをした彼女。
表情も年齢も分からないぐらい濃いメイクをして、化粧品フロアを堂々と歩いていきます。
ただ化粧品を買うわけではないので、正確にはお客さんではありませんが、毎日決まった時間にカウンターの脇を通り過ぎます。
興味はあるが、関わらない方が無難だろうと誰もが思っている彼女。
自分にも関係はないと思っていたのに、ある日彼女はなぜか結乃に向かって歩いてきました。
彼女は一体誰? なぜ結乃に用があるのでしょうか?
他にも個性的な登場人物がいるので、楽しみながら読み進められると思います。
おすすめポイント
主人公の化粧品愛
結乃は化粧品、特に口紅に対する思いが強いのです。
物語も以下の文章から始まります。
無人島に何かひとつ好きなものを持っていっていいと言われたら、迷わず口紅を選ぶだろう。誰も見るひとがいなくても、聞こえてくるのが果てしなく繰り返される波の音だけだとしても、ほんとうに気に入っている口紅が一本あれば。毎朝それを引くことで、生きる気力を奮い立たせることができるような気がする。
こんなにも口紅が好き、と思えるのっていいですよね。
ビューティーパートナーは大変な仕事ではあると思いますが、好きなものに囲まれて働けるのは羨ましい限りです。
綺麗な化粧品を手に取り、丁寧に塗っていくのを想像しながら読むと、すごくわくわくしてきます。
朝忙しくてメイクが適当になってしまうという方も、最後の口紅だけでもゆっくりと引いてみると、明るい気分になれるかもしれませんよ。
結乃のように。
ちなみに私は、こちらのリップを愛用しています。
もどかしさ
隣の馬場さんは指名もされて売り上げをどんどん伸ばしていくのに、どうして私だけ固定客がつかないのだろう。
そんな結乃の気持ちが手に取るように分かり、読んでいるこちらもなんだか焦ってきます。
家に帰って仕事の話になっても、妹は全然理解してくれません。
家族にはちゃんと分かってほしい。
でも、家族だからこそ、しっかりと少しずつ歩み寄っていきたい。
仕事でも家でも、上手くいかない日々の主人公の気持ちにすごくもどかしさを感じます。
だんだんよくなっていくんだろうなと思いながら読み進めても、そんなに事態は大きく変わりません。
一緒になって焦りながら読んでいたそのとき。
最後の最後の一文で、ふっと心が軽くなったように、温かい気持ちになれました。
皆さんにも、ぜひともこの気持ちを感じてほしいです。
最後に
以前あすよみでもご紹介した「羊と鋼の森」の作者、宮下奈都さんによる温かい物語。
これを読めば、きっとメイクをしているときのように明るい気分になれますよ。
ちなみに「羊と鋼の森」のレビューはこちらです。
この記事でも述べましたが、宮下奈都さんの文章は本当に綺麗です。
何かでもやもやしているあなたの心を洗い流してくれることでしょう。
女性の方が共感が得られそうな物語ですが、男性が読んでも前向きになれること間違いなしです!
本の購入は以下のリンクからどうぞ。
それではまた!
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